The Twelve Apostles

十二使徒

神咲豊多香が遺した12本の偉大なワイン。
物語の軸となる使徒たちを、登場順に並べています。

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第一使徒

シャンボール・ミュジニー・レ・ザムルーズ 2001

シャンボール・ミュジニー・レ・ザムルーズ 2001

森の中の楽園へ誘う赤

森の中に現れた赤い果実の香りが誘う

国
フランス
地域
ブルゴーニュ
葡萄
ピノ・ノワール100%
年代
2001年
生産者
ジョルジュ・ルーミエ
登場シーン
第6巻 #51
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ75/ 100

総合 75 / 100

神咲豊多香の手紙

私は原生林に覆われた深い森の中を彷徨っている。苔生した木々から湿り気を帯びた生命の香りが漂う中、癒しを求めて森の奥を目指して歩く。ふと目の奥に差し込む一条の光に私は気づく。森の中にあるはずのない花や赤い果実の香り。胸に手を当て逸る心を抑えながら歩みを進める。不意に森が開け、奇跡のように湧き出した澄みきった小さな泉。砂漠の中のオアシスのように、忽然と姿を現す癒しの水辺。天上からの光を受けて、水面は無数の宝石さながらに煌めいている。私はその美しさに吸い寄せられ、そっと泉に近づく。瞬間、さざ波をひきつれて駆け抜けてくる風が、甘い花と野生の赤い果実の香りを鼻腔に届けにくる。森の奥であることを忘れさせてくれる香りのハーモニー。私は軽い目眩を覚え、にわかに潤いが恋しくなる。上質なクリスタルのように澄み切った光に手を浸し、そっと上澄みを口に運ぶ。なんという甘さ、なんという気高さ。自然の恵みがもたらしたこの豊かさは、人の手の及ばぬこの処女地にこそふさわしい。おお見よ、あの絡み合うふたつの菫色の蝶たちを!この小さな泉は、お前たちの聖地なのかもしれない。

テイスティングノート

ジョルジュ・ルーミエのシャンボール・ミュジニー・レ・ザムルーズ2001年を開けてみようよ。ブルゴーニュのピノ・ノワール100%で、特に特別なヴィンテージなんだ。これは、時間を超えて、過去と現在をつなぐようなワインなんだよ。

このワインは『神の雫』の第6巻に登場するんだ。あのシーンで、このワインの特別さがにじみ出てたよね。どんな場面で出てくるかを知るだけでも、ワクワクしてくるよ。

グラスに注ぐと、レンガ色にオレンジがかった縁が見えて、熟成の証しだね。香りは開いていて、紅茶やスーボワ、乾いたハーブが漂ってくるよ。熟したラズベリーやチェリーの香りがふわっと感じられて、その奥にはスミレのような上品さもあるんだ。

口に含むと、溌剌とした酸味が生き生きとしていて、その後にヴィロードのようなタンニンが優しく包んでくれる。このバランスがたまらないよ。豊かなボディも感じられて、余韻は長く、複雑な味わいが続くから、ゆっくりと楽しんでね。

第二使徒

シャトー・パルメ 1999

シャトー・パルメ 1999

時を超えた調和の芸術

古い石畳を歩くその瞬間、永遠の美に触れる。

国
フランス
地域
ボルドー(マルゴー村)
葡萄
カベルネ・ソーヴィニヨン 48%、メルロー46%、プティ・ヴェルド6%
年代
1999年
生産者
シャトー・パルメ
登場シーン
第8巻 #76〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ75/ 100

総合 75 / 100

神咲豊多香の手紙

このワインは「モナ・リザ」である。私はフィレンツェからピサへ向かう街道に車を走らせていた。中程まで来た頃だろうか。ふと古いロマネスク様式の教会が目に留まり車を止めた。車を降りた私は樹齢数百年のオリーブの古木を庭に植えた古い家並みを、たわわに実った葡萄畑を抜けて村の中心部へと歩いて行く。ローマ時代の石畳の道をゆっくり登り詰めて行くと、一軒のレンガ造りの古い家にたどり着いた。私はその家に暮らす者が誰なのか興味を持った。不思議な気配を覚えたからだ。この小さな町のどこにでも見かけるようなただの古い家なのに、そこには完璧な美と理路整然とした調和を生み出す不滅の魂が確かに宿っていた。私はその家に踏み入った。その瞬間、私の魂ははるかな時を遡り美と謎にとらわれた一人の芸術家と邂逅したのである。彼は私を自分のアトリエへと誘った。高い窓から降り注ぐ午後の陽光は黒い布に覆われた2枚の小さな絵画を照らし出していた。芸術家は私を絵の前に立たせ謎を描けるように布を取り払った。2枚の絵はいずれも婉然と曖昧な微笑みを浮かべる女を描いたもので見分けがつかないほどよく似ていた。芸術家は私に尋ねた。「お前はどちらを愛するか?」と。私は尋ねた。「このふたつの絵はいつ描かれたのか」芸術家は答えた。「右の絵は夏に描いた」「左の絵は春だ」。それを聞いてもうひとつの質問を投げかけた。「このふたつの絵はいったい誰を描いたものだ」と。芸術家は再び答えた。「左の絵は子を宿したばかりの女だ。右の絵は.....」言いかけて芸術家はいたずら小僧のように微笑み私に向かって言った。「右の絵のモデルは教えられない」。私は改めて2枚の絵を見比べた。右の絵はより力強くまだ絵の具の乾ききっていない若々しさが溢れていた。対する左の絵は完成された柔らかさと慈しみが溢れ、私の心を真綿のような優しさで包み込んでくれた。私はすべてを悟って答えた。「私が愛するのは左の絵だ」と。

テイスティングノート

シャトー・パルメは、ボルドーのマルゴー村で19世紀からワインを作り続けているんだ。特に1999年のヴィンテージは、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、そしてプティ・ヴェルドを絶妙にブレンドしているよ。クラシカルなスタイルを守りつつも、常に進化を続ける姿勢がこのワインに表れているんだよね。

このワイン、第8巻に登場するんだよ。開けた瞬間から期待が膨らむ、そんな存在感があるんだ。色を見てみてよ。深みのあるルビー色で、縁がほんのりとオレンジがかってる。グラスを傾けると、涙のようにゆっくりとした脚が現れるんだ。熟成感がしっかりと出てる証拠だよ。

香りを嗅ぐとね、カシスやプラムの濃厚な香りがまず押し寄せてくる。それが落ち着くと、スミレの優雅な香りがふわりと広がるんだ。口に含むと、タンニンがシルクのようになめらかで、酸味も豊かでバランスがとれてる。この酸が全体を引き締めてくれるんだよ。最後に感じるほんのりしたバニラとシガーのニュアンスが、長く続く余韻を残してくれるんだ。

このワインは、エレガントで余韻がとても長いんだ。飲むたびに新しい発見がある感じで、何度も楽しめるよ。温度は14〜18℃くらいがいいね。デカンタージュは必要ないけど、少し時間をかけて楽しむと、深みが増してくるよ。

第三使徒

シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ 2000

シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ 2000

記憶の底に眠る赤い花火

忘れ去られた感動が再び目を覚ます。

国
フランス
地域
コート・デュ・ローヌ
葡萄
グルナッシュ75%、シラー20%、ムールヴェードル5%
年代
2000年
生産者
ドメーヌ・デュ・ペゴー
登場シーン
第11巻 #107
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ80/ 100

総合 80 / 100

神咲豊多香の手紙

『第三の使徒』は私自身の記憶の引き出しにしまわれていた。そのワインは忘れかけていた小さな、しかし、かけがえのない感動を呼び覚ましてくれたのである。あれはいつの日の光景だっただろう。夏に向かう季節ーー草むらの中を中のいい友だちと駆け回りながら日が傾くまで思い切り遊んでいた。隠れん坊をしていた私はいつの間にか友だちの気配がどこにもなくなり空き地に取り残されてしまったことに気づいた。空き地には今は見かけなくなった白いタンポポが雑草の中に群生している。広がり始めた夕焼けがそれらを真っ赤に染めあげていく。どこからともなく夕食を作る美味しそうな香りが風に乗って漂ってくる。何かを焼いているのか?空き地の草の匂いと通じり合い、それらは上等なハーブやスパイスの香りとなって鼻をくすぐる。私は夕闇の空き地に独りきりになってしまった不安で団欒を思い起こさせる香りをおびた風によってどうしようもなく家が恋しくなる。帰ろうもう帰ろう、そう思って歩きだす。だが黄昏が迫る家並はどこも同じように見える。歩いても歩いても家は逃げるように遠くなる。道を見失いお腹がすいて途方に暮れて泣き出しそうになった私の肩に温かい手が置かれた。坊や....温かく大きな手の主は私に微笑みかけ不安を取り除くためにお菓子をくれた。その小さなひと塊を私は口に含んだ。ほっとするような甘さ。考えられないほどの芳醇さ。その温もりは一瞬の思い出として幼い私の胸に永遠に刻まれた。気がつくと私は家の前に立っていた。薄く開いた窓からは団欒の笑い声が漏れ聞こえる。愛し信頼する家族の温もりを求めて私は重い木の扉を開けた。

テイスティングノート

ドメーヌ・デュ・ペゴーのシャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ、これ開ける時って特別な感じがするよね。グルナッシュ75%、シラー20%、ムールヴェードル5%のブレンドで、ローヌのこの地域の魅力がぎっしり詰まってるんだよ。2000年のヴィンテージだから、もう26年の時が経ってるんだって。長い年月を経て、どんな風に熟成しているのか楽しみだよね。

このワインは『神の雫』の第11巻にも登場するんだ。エレガントで複雑な香りと深い味わいが、物語の中で一際存在感を放っているんだよ。登場するシーンを思い出しながら、実際にその味わいを体験してみるのも面白いよね。

グラスに注いでみて、まずその色を見てよ。縁がオレンジがかってきてるから、長い熟成を感じるね。香りは開いてて、ブラックチェリーや干しプラムの濃厚な果実香が感じられて、その奥にスパイシーなニュアンスもあるんだ。口に含むと、豊かな果実味を支えるしっかりしたタンニンが感じられるよ。力強いのにエレガントなタンニンが、口の中で上品に溶け込んでいくんだ。

余韻がとても長くて、果実とスパイスがいつまでも続く感じ。特別な瞬間を楽しむにはぴったりだと思うよ。このワインを飲むときは、大きめのグラスで少し温度を上げて、じっくりと香りと味わいを楽しむのがいいんじゃないかな。

第四使徒

シャトー・ラフルール 1994

シャトー・ラフルール 1994

庭園に咲く一輪の赤の物語

光が陰に溶け込む庭園で、風が運ぶ詩的な囁き。

国
フランス
地域
ボルドー(ポムロール地区)
葡萄
メルロー50%、カベルネ・フラン50%
年代
1994年
生産者
シャトー・ラフルール
登場シーン
第15巻 #139〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ75/ 100

総合 75 / 100

神咲豊多香の手紙

私は5月の晴れ渡った空の下にいる。そこは大樹の下で優しく陽を遮る陰に守られながら光り輝く庭園を眺めていた私はふと携えていた一冊の古い本を繙いた。

「まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき前にさしたる花櫛の花ある君と思ひけりやさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは薄紅の秋の実に人こひ初めしはじめなり わがこゝろなきためいきの その髪の毛にかゝるとき たのしき恋の盃を君が情に酌みしかな 林檎畠の樹の下に おもづからなる細道は 誰が踏みそめしかたみぞと 問いたまふこそこひしけれ」

私はゆっくりと立ち上がり、そらんじたその詩を口ずさみながら花咲く庭園をそぞろ歩く。遠い記憶の中で甘く微笑む少女を想いながら、芽吹く青葉の香りと足元から立ちのぼる雨上がりの土の香りに酔いしれて......いつの間にか私は庭園の直中に佇んでいた。紅色 櫻色 赤紫 そして白妙の鮮烈な花のハーモニー 。私はその中から赤紫の一輪をそっと摘みとり、いつか少女とともにそうしたように蜜腺を吸った。混じり気のない透明な仄かな、そして自らを語ろうとしない無口な甘さが、記憶の中の少女の微笑みと甘い口づけに寂かに連なっていく...そのワインは初恋の人に似ている。

テイスティングノート

シャトー・ラフルールは、フランスのボルドー地方ポムロールで代々続く家族経営のワイナリーなんだ。特に注目すべきは、メルローとカベルネ・フランを半々にブレンドしているところ。この組み合わせが、深みと複雑さを生み出していて、まさに特別な一本だよ。畑は小規模だからこそ、一本一本が本当に特別なんだ。

このワイン、第15巻に登場してるんだ。使徒シリーズの中で、どんな場面で開かれたかは分からないけど、これを選ぶってことは、その場面が特別だったに違いないよね。そんな特別な機会にぴったりなワインだと思うよ。

さて、グラスに注いでみると、色合いはレンガ色がかった深いガーネット。熟成が進んでる感じが伝わってくるよ。香りをかぐと、ブラックチェリーの濃厚な香りが広がる。その奥に、湿った土やスミレのニュアンスも感じられて、とても複雑な香りだなって思う。口に含むと、ヴィロードのようなタンニンが舌に優しく広がり、果実味が豊かに溶け込んでいくのを感じるよ。酸味は豊かで、全体のバランスをしっかり支えてる。

余韻は長く、飲み終わった後もその風味がしっかりと口に残る。32年の熟成が生み出した複雑性とエレガントさがしっかり味わえる一杯だよ。これを飲むなら、16℃くらいに冷やして、少し大きめのグラスで楽しむといいよ。

第五使徒

シュヴァリエ・モンラッシェ 2000

シュヴァリエ・モンラッシェ 2000

孤高の頂きに立つ白

孤高の頂で、全てがひれ伏す瞬間を思う

国
フランス
地域
ブルゴーニュ(ピュリニー・モンラッシェ村)
葡萄
シャルドネ100%
年代
2000年
生産者
ミシェル・コラン・ドレジェ
登場シーン
第18巻 #169、#170
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ68/ 100

総合 68 / 100

神咲豊多香の手紙

私は今、孤高の頂に佇んでいる。この清冽なる待機、今、私の頭上には空の他、何もない。眼下の峰、総てはひれ伏すように横たわり、岩肌に張りつく白銀は絹のドレスを纏うかのように滑らかに輝いている。ふいに涙がこみあげた。その意味を探るべく私はこの頂に至るまでの道程を振り返った。常に困難でありながら堪えきれぬほどの希望、そして何より魔物に魅入られたような執念に駆り立てられ私は頂を目指したのだった。朝日に色づきはじめた高峰を見上げながら第一歩を踏み出した。挑む者を試すような静けさ、巨人はただ見下ろすのみだ。私は「ドン・キホーテ」のように挑みかかる。はやる気持ちを抑えながら、踏みしめるように頂を目指す。するとどうだろう。山は刻々とその表情を変え、時に笑顔、時に穏やかさを見せ、そして時に荒ぶる魂をもって牙を剥く。しかし私は諦めない。理想と希望、そして魂の求むるがままに私は岩にしがみつき滑る雪を踏みしめ、ひたすら高みを目指してゆく。あと少しあと少し、魂は飢え、渇き、聳え立つ頂以外、何ものも目に入らない私を嘲るように山は巨大でそして美しく沈黙している。絹のヴェールに覆われたような頂上は時折、視界に現れてはまた消え近づいたと思えば逃げ水のようにまた遠ざかる。ああ山よ。お前は魔物か。それとも神なのか⁉︎どれだけの時が流れただろう.....私の手は気がつくと頂をつかんでいた。辿り着いたのだ私は。なんという至福、なんという透明。豊かさも冷たさもこの世の複雑さも、あるいは優雅さも。この頂から総て鳥瞰できる喜び。私はそれを胸いっぱいに吸い込み、そして山を後にした。遠く高嶺を望めるところまで来て私は振り返った。孤高の頂は再び神秘に包まれ私を誘っていた。「もう一度いつかまたおいで、今度こそ教えてあげるから」。私は確かに聞いた。あれは幻だったのか?あの光景の総ては夢幻に過ぎなかったのか。それを確かめるために、いつかまたあの孤高の山を目指したいと切望せずにはいられない。今あの孤高のワインを飲む時に、ただひとつ言えることがある。いかに高い理想を持ち、いかに大きな期待を胸に味わったとしても、そのワインには決して失望することはないだろう。

テイスティングノート

ミシェル・コラン・ドレジェのシュヴァリエ・モンラッシェ、2000年のヴィンテージなんだよ。ブルゴーニュのピュリニー・モンラッシェ村から、この一本は特級畑で育ったシャルドネ100%で造られているんだ。ブルゴーニュのワインを語るなら、この一本は外せないよね。

第18巻に登場するこのワイン、漫画でも特別なシーンで紹介されているんだ。あの物語の中で、どんな風にこのワインが登場するのか考えるだけでワクワクするよね。まさに使徒級の逸品として、物語に深みを与えてくれる存在なんだ。

じゃあ、開けてみようか。液面を傾けると、黄金がかった深い色合いが美しい。香りはまるでオーケストラみたいに、熟した白桃やアプリコットの豊潤なアロマがふわっと広がるんだ。そして、少し時間を置くと、アカシアの蜂蜜とバナナブレッドのような甘くコクのある香りが追いかけてくる。

口に含むと、そのまろやかなテクスチャーと、しっかりとした酸が絶妙なバランスを見せるよ。ミネラル感がしっかりとしていて、飲み終わった後にも長く続く余韻がたまらない。これこそが、特別な機会に相応しいワインだね。

第六使徒

バローロ・カンヌビ・ボスキス 2001

バローロ・カンヌビ・ボスキス 2001

孤独を抱く赤の芸術

深い藍の静寂が、孤独を包み込む。

国
イタリア
地域
ピエモンテ州
葡萄
ネッビオーロ100%
年代
2001年
生産者
ルチアーノ・サンドローネ
登場シーン
第20巻 #196〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ75/ 100

総合 75 / 100

神咲豊多香の手紙

孤独、この世に生を受けたときから私は真の孤独というものを知らずに生きてきた。私の近くには常に温もりがあった。本当に苦しいときは癒しを与えられ、思い上がっているときは厳しさの中に放り込まれた。そうやって私は生きてきた。それが当然と思って.....私は見捨てられた吟遊詩人のように暗闇を歩いている。初めて味わう孤独に怯えながら...ふと立ち止まるといつの間にか漆黒の空は深い藍色を帯び始めていた。ここは見渡す限り動くもののない静かなる領域、その世界には静謐な泉は存在せず、それゆえに水面を渡る涼やかな風を感じることはない。渇きを癒す泉もなければ焦燥を鎮めてくれる風もないのだ。それにも拘らず救いがあり癒しがあり何よりもそこに身を浸すような穏やかさが溢れている。ゆっくりと明けていく薄闇の向こう側に柔らかで安堵に満ち溢れた影が佇んでいる。謎めいた「影」はやがて微かな光の衣を纏い始めた。残月の如く浮かび上がるその姿は厳かでありながら慈愛に満ち溢れている。その佇まいは人でありながら宇宙である。その眼差しは伏していながら総てを見つめている。その指先は永遠なる思惟を物語っている。立ち上がるでもなく座り続けるでもなく語るでもなく笑うでもなく、そしてただ沈黙するでもない。幸せでも不幸でもなく夜でもなく朝でもない。太陽でもなく月でもない。しかしあなたは私を受け入れてくれている。ありのままの私を静かに抱き寄せてくれようとしている。思わず近づく、愛する子のように、愛される母のように、孤独を携えた私の肩を抱き寄せてくれる気がして、抗うことのできぬ力に引き寄せられながら私は歩み寄る。頬を寄せる安らぎを求めて。そして訊ねる。私は何をすればいいのですか?この先の幾歳を生き抜くことに一体どんな意味があるというのですか?弥勒菩薩半跏思惟像。このワインは悩める者の問いかけに黙示をもって答えてくれる。

テイスティングノート

ルチアーノ・サンドローネが手がけるバローロ・カンヌビ・ボスキスは、ネッビオーロ100%のワインで、ピエモンテ州の魅力を存分に引き出している一本なんだ。特に2001年のヴィンテージは、その熟成具合がたまらない。このワインを開けると、まさに使徒級の特別な体験ができるよ。

このワインは『神の雫』第20巻に登場するんだ。そこで描かれるシーンは、まさにこのワインの持つ深い魅力を表現するのにぴったりなんだよ。漫画の中で、このワインが登場することで、物語の中の緊張感やキャラクターの心情が一段と引き立つんだ。

グラスに注いでみると、色はレンガ色で、縁はオレンジがかっている。その見た目からしても、25年の熟成を感じさせるんだ。香りをかいでみてよ、紅茶やドライハーブ、そしてほんのりとしたタバコの香りが広がる。これだけで、もうその風味の複雑さに引きこまれるよ。口に含むと、緻密で力強いタンニンが舌を包み込む。そのタンニンは、時を経てヴィロードのように滑らかになっている。酸味も生き生きとしていて、バランスが絶妙なんだ。

飲み込んだ後には、長く続く余韻が口の中に残っている。この余韻が、ピエモンテの気候と土壌を思わせるんだよ。デカンタージュしてから飲むと、さらにその深みを感じられるはず。大ぶりのグラスで、ゆっくりと楽しんでみて。

第七使徒

シネ・クア・ノン 2003 ザ・イノーギュラル・イレブン・コンフェッションズ・シラー

シネ・クア・ノン 2003 ザ・イノーギュラル・イレブン・コンフェッションズ・シラー

孤高の若獅子が歩む道

風と共に歩む若獅子の道がここにある。

国
アメリカ
地域
カリフォルニア、サンタバーバラ、サンタリタヒルズ
葡萄
シラー
年代
2003年
生産者
シネ・クア・ノン
登場シーン
※毎年ワイン名やラベルが変わる
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ73/ 100

総合 73 / 100

神咲豊多香の手紙

そのときの私は自信に溢れていた。荒野にひとり佇もうとも、深い森をひとり彷徨おうとも、道を失おうとも、あるいは大海に浮かぶ小舟にただひとり揺られようとも、決して動じることはない。そう思い込んでいたのだ。群れを離れた若獅子のごとく猛々しく振る舞っていた自分を、私はこのワインをグラスに注ぐ。そのたびに思い起こさずにはいられないのである。その香りは私を捕らえて放さない。懐かしい過去のように輝かしい未来への空想のように。私はたまらずに手を伸ばしそれを味わう。どこまでも高い空、見渡す限り広がる地平線。そして確固として動じない大地。私は我が身の矮小さを思い知らされる。遠くから地鳴りのように厳かに、潮騒のようにたおやかに聴こえてくる一本の旋律。それはひとつ、またひとつ重なり合い、荘厳にして複雑なバロックとなって私をとりまきどこまでも鳴り響いてゆく。それは巨大な蟻の塔のように見える。それは群衆の叫びのようにも感じる。それは天を支える聖なる柱のように聳えている。それは訴えてくる。祈るがいい。神にではなく人の力に。目指すがいい、天ではなく声のするほうを。我が身を見失いし者よ。驕り昂り、それ故に人に見放されし者よ。日々を生きることに振り回され、あるいは目まぐるしい時の流れにただその身を委ね、揺蕩うだけの者たちよ。掌を開き漲る力を確かめ、そしてこの地を訪れるがいい。ここには永遠に終わらぬ夢がある。ここには大いなる未完成が佇んでいる。アントニ・ガウディ。あなたは信じていたのだろうか。人々が諦めることを知らず、あなたの夢を紡ぎ続けるだろうと。幾多の若者たちが西から、そして東の果てからも集い、何を求めるでもなく、槌を振るい、鏝を操り、汗を流すことを厭わず、力の限りあなたの描いた夢のその先を、ともに創り続けるこの奇跡を、あなたは信じていたのですか。このワインは永遠の未完成サグラダ・ファミリアである。

テイスティングノート

シネ・クア・ノンの2003年ヴィンテージ「ザ・イノーギュラル・イレブン・コンフェッションズ・シラー」って、名前からして特別感があるよね。カリフォルニアのサンタバーバラ、サンタリタヒルズから生まれたこのワインは、シラーをメインにした力強い一本なんだ。こういった特別なワインを開けるときは、何かしらの特別な気持ちがあるよね。

このワイン、第十二使徒の巻に登場してるんだ。どんなシーンだったか覚えている?ラベルが毎年変わるから、その年の特別さをきっと感じられるはずだよ。君も一緒に、その場面を思い出しながら、この一本を楽しもう。

色は深いガーネットで、縁がややレンガ色になっているのが見て取れるよ。香りはすごく複雑で、ブラックベリーやカシスの濃厚な果実香が最初に立ち上がってくる。それに続いて、スパイスやドライハーブ、紅茶のようなニュアンスまで感じられるんだ。じっくりと嗅ぐと、まるで香りの旅に出たような気分になるよ。

口に含むと、まず豊かな果実の甘味を感じるんだけど、すぐにヴィロードのようなタンニンが舌の上に広がるんだ。酸はしっかりとした骨格を支えつつ、全体を引き締めている。余韻は長く、深い満足感が残るんだよ。そんな時は、少し大きめのグラスを使って、14〜18℃くらいでじっくりと楽しむといいよ。

第八使徒

ジャック・セロス・キュヴェ・エクスキーズ NV

ジャック・セロス・キュヴェ・エクスキーズ NV

出会いの泡、心躍る瞬間

一瞬の泡が織り成す、甘く切ない出会いの余韻。

国
フランス
地域
シャンパーニュ
葡萄
シャルドネ
年代
NV
生産者
ジャック・セロス
登場シーン
第27巻 #260〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ67/ 100

総合 67 / 100

神咲豊多香の手紙

このワインは「出会い」である。出会いは常にときめきと躍動をともなう。人は人と出会うことでしか変わりえ図、新たな道を見出すこともできない。ただその出会いが異性であった場合、人は時に叶わぬ想いを胸に秘め、ただ遠くから見つめることだけで満ち足りたひとときを過ごすだろう。一瞬のときめき、強さと優しさと激しさと静けさと、きりりとした自尊心とたおやかな女性らしさを兼ね備えた横顔、私にはわかっている。あなたは優しさを渇望している。ただあなたの求める優しさは今の私には到底、手が届かない。ああ美しき人よ。見つめるものを陶酔させる笑顔は甘く、そして切ない。控えめでありながら凛と背を伸ばし、まっすぐに目を見つめるあなたは、その内面に獣のようなエロスと聖女のような高潔さを兼ね備えている。あなたは常に歩んでいる。あなたは留まらず何かを目指している。その何かが私にわからないのは、私がまだ未熟だからであり、決してあなたのせいではない。なぜならあなたは太陽と大地と、そして風のただなかに生きているから。ゆらゆらと黄金の髪を風にたなびかせ、あなたは自信に溢れ、私を振り返る。「ついておいで来られるものなら」。そのワインは一人の女性であり、一本の樹である。広々とした草原に佇むその一本の樹は、風を受けて常に揺れ動いている。ざわざわざわざわと生い茂る葉は風に揺蕩いながら、降り注ぐ太陽に煌めいている。その樹は私の総てを沈黙を持って受け入れてくれる。ああ青春のひととき、私を虜にしたワインよ。あなたは手を差し伸べればそこにいた。しかし決して届くことはなかったポートレートの中の「マドンナ」である。

テイスティングノート

ジャック・セロスのシャンパーニュ、キュヴェ・エクスキーズは、その名の通り特別な一本なんだよね。彼らはシャルドネの魅力を最大限に引き出すことに情熱を注いでいて、このキュヴェではそれが見事に表現されているんだ。シャンパーニュ地方でシャルドネのみを使ったこの泡は、伝統を尊重しながらも革新の意志を感じさせるよ。

このワインは第27巻に登場してるんだけど、使徒が選ぶシャンパーニュだけあって、その場面自体が特別なんだよね。あの巻で描かれた緊張感と期待感が、このワインの持つ複雑さやエレガンスと重なって印象的だったんだ。

グラスに注ぐと、泡の細かさにまず目を奪われる。まるで液体の宝石みたいに、きらきらと輝いているよ。香りは、柑橘系のフレッシュなアロマが際立っていて、ほんのりとトーストしたパンの香ばしさも感じる。口に含むと、シャープで生き生きとした酸が口いっぱいに広がって、その後に広がる果実味が豊かで、思わず微笑んでしまうよ。最後に残るほろ苦さが心地よく、長い余韻を楽しませてくれる。

このシャンパーニュは、細やかな泡と複雑な味わいが絶妙に調和しているから、特別な日の乾杯にぴったりだと思うよ。少し冷やして、できれば中庸なグラスで楽しむといいんじゃないかな。

第九使徒

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2005

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2005

太陽の恵みが描く、熟成の芸術

成功を照らすのは困難という名の太陽。

国
イタリア
地域
トスカーナ州(モンタルチーノ)
葡萄
サンジョヴェーゼ・グロッソ
年代
2005年
生産者
ポッジョ・ディ・ソット
登場シーン
第30巻 #294〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ77/ 100

総合 77 / 100

神咲豊多香の手紙

私は走り続けてきた。様々な困難を乗り越え、約束の地を目指して。困難の一つ一つは目の前に立ち塞がったその時は憎むべき存在だった。しかし振り返ると、それほど遠い昔のこともないのに懐かしく感じられる。今だからこそわかる。成功は「月」であり困難こそが「太陽」なのだ。太陽がなければ月は決して輝くことはない。同じように困難のない成功は、人の心をときめかせることはないのだ。成功は「果実」であり、困難は「大地」である。大地と格闘することなしに果実を手にすることは叶わない。同じように地に足のつかぬ成功などに喜びは伴わない。今ならばわかる。今ならばそれを伝えられる。勝利を手にし、果実を口にしようとしている私には。しかしどうだろう。それを後から来る者に伝えることは、困難であると同時に傲慢でしかないのだ。傲慢でしかないからこそ私は、その役割をワインに託したいと思うのである。足に残る心地よい疲れ、破れそうな心臓をなおも働かそうとする勝利への渇望。見よ、手の届くところに凱旋すべき門がある。弾ける汗、それは苦しみを乗り越えた者にこそ相応しい聖なる雫である。人々の歓声の声が出迎える最後のトラックを勇者は誇りを胸に駆け抜けていく。両手を天に突き上げ、勝利の雄叫びをもって迎えられるがよい。女神が授ける様々な紅い花の冠、勝者を讃える華やかな宴。このワインは秘めた情熱である。このワインは困難を乗り越える力の源である。このワインは華やかな成功を夢見る野心である。このワインは手にした果実であり、それを口にした若き勇者の高揚であり、忘れ得ぬ「勝利の余韻」である。

テイスティングノート

ポッジョ・ディ・ソットのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、君も知ってるよね?トスカーナのあの急斜面で育つサンジョヴェーゼ・グロッソを使ってるんだ。ヴィンテージ2005は、ちょうどいい熟成具合で、モンタルチーノの魅力を味わうには最高の一本だよ。

第30巻で登場するワインなんだ。あのシーンで、どんな風に使われていたか思い出す?細部は言えないけど、物語の中で特別な存在感を放っていたことは間違いない。

このワインをグラスに注いでみると、レンガ色の縁が見えるんだ。21年の熟成を経て、香りには紅茶やスーボワ、それにドライハーブのニュアンスが漂ってくる。開くとチェリーの香りが優しく鼻をくすぐるんだよ。

口に含むと、果実の柔らかさが広がって、その後に力強いけど滑らかに溶け込んだタンニンが感じられる。酸味は生き生きとしていて、全体のバランスをしっかり支えてる。余韻が長く続いて、最後の一口まで飽きさせない。こんな風に飲むと、モンタルチーノの風景が広がっていくんだよ。

第十使徒

グラン・エシェゾー 2002

グラン・エシェゾー 2002

力強さと繊細さの共鳴

光を求めて、闇から抜け出す瞬間のような

国
フランス
地域
ブルゴーニュ(グラン・エシェゾー)
葡萄
ピノ・ノワール100%
年代
2002年
生産者
ロベール・シュルグ
登場シーン
第34巻 #330〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ77/ 100

総合 77 / 100

神咲豊多香の手紙

ここは夜なのか、それとも地の底なのか。激しい生命力を孕みながら私は種子のようにその時を待つ。生きることの意味を探し続けて彷徨うことは決してたやすくはない。それは時に振り返り、時に駆け出し、立ち止まって思い悩むことの繰り返しなのだ。胎動そして誕生。闇を這い登り、光の誘惑に導かれ、目指すものはまだ見ぬ空。地の底とめくるめく外界を隔てる地平を突き抜けて私は木の芽のように天にその手を伸ばす。光だ。待ち続けた光。私は一気呵成に果てしない空を目指し巨木となり天に向かって行く。眼下に広がる大地、生命の坩堝、土、水、草、花、獣、人はもちろん小さな虫けらまでも私は今虚空から俯瞰している。胸に一節の歌が浮かんだ。「花に鳴く鶯水に住むかはづの声を聞けば、生きとし生けるものいづれか歌をよまざりける。力も入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をもなぐさむる歌なり」。宇宙から望む地球とはかくなるものか、闇の直中に浮かぶ優しき輝き、命の源。このワインは魂である。このワインは俯瞰した大地である。このワインは宇宙の広がりである。そしてこのワインは「希望」である。

テイスティングノート

ロベール・シュルグのグラン・エシェゾー、2002年ヴィンテージは特別なんだよ。ブルゴーニュの中でもこのワインは、ピノ・ノワールの豊かな表現力を持っているんだ。特にグラン・エシェゾーの畑から生まれるこの一本は、その土壌と気候の恩恵を受けて、他にはない魅力を放っているんだよ。

このワインは、『神の雫』第34巻に登場するんだ。使徒が大切にしている一本なんだけど、この巻でどんな評価を受けているか、気になるよね。特にこの巻では、ワインの深みや複雑さが取り上げられているんだ。

さあ、グラスに注いでみよう。深みのあるルビー色がまず目を引くよね。縁には少しオレンジがかっていて、見た目からして熟成の度合いがわかる。香りを嗅いでみて、熟したブラックチェリーやプラムの香りがふわっと広がって、さらにそこにスパイスやモカのニュアンスが加わるんだ。口に含むと、果実味が豊かに広がって、タンニンはヴィロードのように滑らかで、酸味も生き生きとしているんだよ。

このワインの余韻は長く、飲むたびに新しい発見があるよ。温度は16度くらいで、少し大きめのグラスで楽しむと、この豊かな香りと味わいがより引き立つんだ。デカントはせずに、そのまま楽しむのがいいよ。

第十一使徒

フェレール・ボベ・セレクシオ・エスペシャル 2008

フェレール・ボベ・セレクシオ・エスペシャル 2008

情熱の大地から吹く風を味わう

この風が運ぶもの、それは情熱と大地の記憶。

国
スペイン
地域
カタルーニャ地方(プリオラート)
葡萄
カリニェナ主体
年代
2008年
生産者
フェレール・ボベ
登場シーン
第39巻 #380
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ72/ 100

総合 72 / 100

神咲豊多香の手紙

このワインには風が吹いている。情熱を求めて彼の血を訪れし時、私は知った。汗を鎮めてくれる風、その清々しさ、灼熱の大地に吹く風の豊かさを。この夕陽を刻みつけたワインをグラスに注いだ時、私には色とりどりの風が見えた。風がなぜ一抹の寂しさを帯びているのか、答えは風が常に去ってゆくものだからなのかもしれない。私は風に運ばれて天空に舞い上がる。限りない大地の豊かさを離れた空から見下ろす時、いつか自分に訪れる永訣の時を思わずにはいられないのだ。その時思い出すのは家族が揃っていたあの幸福なひとときである。出会いともに暮らし、苦しみ愛し合い、ずっとずっと与え続けた日々が風とともに遠ざかっていくのを見つめながら私は佇む。そして初めて知るのだ。別れこそが総ての始まりであることを。太陽よ降り注げ、生命を育むがよい。雨よ濡らせ、大地を潤し、生きとし生けるものを癒すがいい。風よ運ぶがよい。命を宿しし種子を新たな天地へと。私はただ見送る。樹のように佇みながら、ふと瞳の奥を射る燃えるような夕陽。天地に織り成す光と影の物語。火照りを和らげてくれる風だけが優しく頬を撫でてくれる。さらば愛しき者よ。お前は私であり私はお前でもある。天に向かい永遠に伸び続ける樹のような大地の奥にもくもくと張りゆく根のような。風に乗りどこまでも旅する種子のような。そんな人生であれ。風よ、私をどこに連れていってくれるのだ。太陽よ、私をどこから見守ってくれているのだ。今度こそ私はこの地平から旅に出る。生きて生きて生き抜いてきた今だからこそ出られる創造の旅へと。人生を回想する時、そこに私は愛するが故の決別がある。決して振り返らない後ろ姿を。いつまでも眺めていられる自分の強さ、優しさ、理解。無からもう一度始められることへの情熱と期待。新たなる旅立ちの予感。いつの日かお前たちも見るだろう、この夕陽を。そしていつか感じるだろう。このワインは太陽とともに去りゆく風である。

テイスティングノート

フェレール・ボベ・セレクシオ・エスペシャルは、スペインのカタルーニャ地方プリオラートで生まれたワインなんだよ。特にカリニェナを主体にしたこの2008年のヴィンテージは、険しい地形と豊かな鉱物の恩恵を受けて、独特の風味を持ってる。この地域はユニークなテロワールで知られているから、一本開けると特別な感じがするんだ。

このワインは『神の雫』の第39巻に登場しているんだけど、アニメや漫画の中で使徒として登場するのはやっぱり特別だよね。ワインがストーリーに絡んでくると、より興味がそそられる部分があるんだ。

見てよ、この色。ややレンガ色がかったガーネットで、グラスを傾けると脚がしっかりと流れて、熟成を感じさせるよ。香りは、ブラックベリーや熟したプラムがメインに広がって、その奥に紅茶やドライハーブのニュアンスが潜んでいるんだ。口当たりは力強いけど、タンニンは緻密で、果実のふくよかさが口の中を優雅に包み込むよ。

飲んだ後もその余韻が長く続くんだ。まさにプリオラートの太陽の恵みを感じる瞬間。こんなワインを飲むときは、ぜひ大きめのグラスで楽しんでみて。開いてくるともっと魅力的な一面が見えてくるよ。

第十二使徒

シャトー・ディケム 1976

シャトー・ディケム 1976

貴腐の逸品、時を超えて

霧に覆われても見失わない、甘美の道。

国
フランス
地域
ボルドー(ソーテルヌ地区)
葡萄
セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン
年代
1976年
生産者
シャトー・ディケム
登場シーン
第44巻 #431〜
酸味タンニンボディ果実味余韻複雑さ73/ 100

総合 73 / 100

神咲豊多香の手紙

私は歩いている。苔生した暗い森を抜けると太陽の照りつける丘が開けた。だが、その丘はまた霧に覆われ、私は歩むべき道を失う。私はまた歩いている。そこは静謐な寺院。歴史を刻みつけた長い廊下は、光が差してはとだえ、どこに続いているかも定かではない。私はふいに檻に閉ざされた。しかし、その檻は人を閉じ込め苦しめるための檻ではない。むしろ、その後ろに待つ喜びをより深くするための、神の仕掛けた余興なのである。私はしなやかな雌ライオンに出会う。鳶色の目でじっと私を見つめている。私に恋をしているのだろうか?その吸い込まれるような瞳。歩み寄ろうとすると、背を波立たせながら逃げ去ってしまう。私はまたひとり。そして、歩き出す。私は歩いている。色とりどりの果物や、花や、麦わら帽子、そして絹の織物や笑顔、溢れかえるそれらは昼下がりの市場だ。私はそれから総てを味わいながら、ゆっくりと時の流れを楽しむ。ゆっくりと気まぐれに食べ、気まぐれに言葉を交わし、そしてくつろぐ。私は泳いでいる。深い、底の見えない透明な泉を。果てしなく続くグランブルーの彼方に、私はゆっくりと滑り落ちてゆく。これは温もりなのか、それとも優しい絶望なのか。絶望だとするなら、もう決して戻ることはできないだろう。私はピクニックに出かける。誰と?決まっている。幼い頃の私とだ。年老いた私を、幼い頃の私が不思議そうに見つめている。そして自由に駆けまわる幼い私を、年老いた私が見守るように見つめている。どちらも同じ私。一本のワイン。私はパイプをくゆらしながら、遠い海を見つめている。日はとうに沈み、夕闇が視界を閉じ始めている。私はいつの間にか眠りに落ちていた。若き日の私は血気盛んに嵐の海を乗り越えてきた。歳を重ね、大地を踏み固めるように前に進んで、時に壁を登り坂を下り、泣き、笑い、怒り、喜んだ。黄昏を迎えた私は歩いてきた道を振り返るが、そこには何も見えず、ただ足跡だけが続いていた。決して戻ることのできない私ひとりの足跡、ふと目を覚ます。入れたばかりの紅茶は、まだ温もりを残していた。60年の歳月は、一瞬の夢に過ぎなかった。このワインはまどろみが連れてきてくれた長く、短い夢である。このワインは永遠であり、そして一瞬である。

テイスティングノート

シャトー・ディケムの1976年ヴィンテージを開けるなんて、特別な瞬間だよね。ボルドーのソーテルヌ地区で作られるこのワインは、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランがブレンドされているんだよ。甘口の極みとして、時間をかけて熟成された風味を楽しめるっていうのが魅力なんだ。

このワインは『神の雫』第44巻にも登場しているんだよね。その中での特別な使徒としての存在感が、物語の中でも一際輝いていたんだ。多くの人がこの巻で、その特別なニュアンスに魅了されたんだと思うよ。

グラスに注いでみると、濃いアンバー色が印象的だね。香りを嗅ぐと、蜂蜜や熟したアプリコット、それに乾燥したハーブのような深みのある香りがふわっと広がる。口に含むと、まるで絹のように滑らかな甘さが広がって、すぐに生き生きとした酸味が現れる。このバランスが絶妙で、一口一口が本当に贅沢な体験なんだ。

余韻も長く続いて、最後にほんのりと紅茶のような香りが心に残る。これを飲むなら、少し冷やしてから中庸のグラスで楽しむのがいいかもね。このワイン、飲むたびに新しい何かを発見するような、そんな奥深さがあるんだよ。

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